
肖像画は当時の貴族にとって写真のように顔や姿を現すものである以上に、権力や財力、地位を示すものでもありました。
歴史的な人物といえば、「コレ!」といった代表的な肖像画があるもの。それはたいていその人物の最盛期やもっとも美しい時代に描かれたものです。
マリー・アントワネットはそこが一味違います。
彼女の肖像画は幼少期から結婚後、さらにはヴェルサイユ宮殿を追われ、タンプル塔に幽閉された時代のものまで存在します。
アントワネットは一生の姿を肖像画の中に留めているのです。
「肖像画で見るアントワネット」まずは生まれ故郷、ウィーンのシェーンブルン宮殿時代から。
アントワネット7歳。まだまだあどけない少女時代。

美しい金髪に青い瞳だったというアントワネット。白い髪は盛装であるウィッグ(かつら)です。白い色をきれいに見せるために染料や小麦粉まで使用されたのだとか。

こちらは鉛筆に水彩と思われる着色で、さわやかな仕上がりの作品です。
キリっとキメポーズ! アントワネット12歳の肖像画

アントワネットの顔立ちで印象的なのは広めの額とちょっとたれ目な目尻。口元はちょっと受け口でこれはハプスブルグ家の特徴という話も・・。
もうすぐヴェルサイユへ! アントワネット14歳の肖像画

こちらは白系の生地にアクセントカラーとしてブルーが入ったドレス。ドレスの色を押さえ、背景のカーテンや手を置いているクッションの色をブルーに。アントワネットのサファイアのような瞳の色を、よりいっそう強調した作品です。
これは婚礼前にフランスに送られた作品。ちなみにこの髪型はその後「王太子妃風」としてウィーンの貴族の間で流行したのだとか。

音楽大国、ウィーンでアントワネットももれなく音楽に親しんでいました。この作品で弾いているのは「スピネット」と呼ばれる「チェンバロ」の一種。「チェンバロ」とはピアノの祖先となる古楽器で、ちょうどこの頃大変人気のあったものでした。
ちょっと見えにくいですが、よく見るとアントワネットの後ろ髪がかなりながいことが分かり、盛装ではないことが分かります。
ヴェルサイユへの御輿入れを控え、シェーンブルンでの日常を描きとどめたのでしょう。
アントワネットは作曲にも興味を持ち、その作品は現在もいくつか残っています。
さぁ、ついに舞台はヴェルサイユへ!
次回も絵画でヴェルサイユのアントワネットを観てみましょう。
